子どもの頃、鵜住居にあった富乃家、地元では「じゅうべえさん」と呼び、そこでラーメンを食べるのが楽しみでした。
釜石を離れてからも、帰ると立ち寄ってラーメンを食べる。
私にとっては、そんな店でした。
残念ながら東日本大震災で、その味を食べることはできなくなりました。
ちょっと暗い話になってしまって申し訳ないのですが、震災当時、無事を確認して数日後に会うことができた親戚から、
「もう、あのラーメン食べられないぞ」
と言われたときの、なんとも言えない気持ちは今でも覚えています。
家や町のことを考えなければならない状況で、ラーメンの話。
それほど地元の味でした。
そもそも「釜石ラーメン」と思って食べていなかった
釜石に住んでいた頃は、単に「ラーメン」でした。
透き通ったスープに、細めのちぢれ麺。
それが普通だったので、わざわざ「釜石ラーメン」と意識した記憶がありません。
「釜石ラーメン」という名前を前面に出すようになったのは震災後だったでしょうか。
この辺は記憶が曖昧です。
そして釜石ラーメンと一口に言っても、食べてみると店によって結構違います。
透き通ったスープとちぢれた麺という雰囲気は共通していても、動物系のだしが強かったり、魚介っぽさを感じたり。
私も釜石ラーメンの店を、それほど食べ歩いたわけではありません。
ただ、思い出補正もかなり乗っているので、じゅうべえさんのような魚介だしっぽい味が好きです。
違っていたらすみません。
思い出の味は、成分分析ができません。
「なんか新しいラーメン屋あるな」
鵜住居で営業している「ラーメンこんとき」さん。
最初から知っていた店ではありませんでした。
よく通る道沿いに店ができて、
「あれ? なんか新しいラーメン屋あるな」
くらい。
あるとき、ふと立ち寄りました。
そしてラーメンを食べた瞬間、
懐かしい。
ちょっと懐かしすぎる。
全身に鳥肌が立つというか、昔のことが一気に戻ってくるというか。
いろんな感情が混ざって、少しうるうるしながらラーメンを食べていたと記憶しています。
あっさりしたスープ。
この塩チャーシューがまた懐かしい。
そして、何よりも美味しい。
それ以来、釜石へ行ったときに立ち寄りたい店の一つになりました。
「今忙しいがら、シンプルなメニューだけ注文してけで!」
しばらくお店を閉めていた時期もありましたが、後継の方が入られたようで、今は行くと営業していることが多く、安心して立ち寄れるようになりました。
今年のお盆に寄ったときは、お客さんが次から次へと入ってきます。
大将が、
「今忙しいがら、シンプルなメニューだけ注文してけで!」
と、入ってくるお客さんに愛嬌よく説明していました。
そしてまた次のお客さんが来る。
なんだかその光景まで含めて、いい昼ごはんでした。
昔食べていたラーメンと、もちろん同じではないのだと思います。
そもそも違う店ですし。
それでも、食べた瞬間に昔の景色まで一緒に出てくる味があります。
私にとって「こんとき」さんのラーメンは、そんな一杯です。
また立ち寄らせていただきます。
ごちそうさまでした。
