「競売物件って、やっぱり安く買えるんですか?」
と聞かれることがあります。
競売。
なんとなく、市場価格よりずいぶん安く家が買えそうな響きがあります。
実際、一般に売りに出されている住宅と比べれば、「これは安かったな」と思う金額で落札される物件もあります。
ただ、まず考えたいのは、その物件を何のために買うのか。
自分で住むのか。
貸すのか。
リフォームして再販売するのか。
同じ1,000万円でも、その人の目的によって「安い」の意味が変わります。
なお、私はここ何年も主に岩手県とその周辺の競売物件を見ています。
全国の競売事情を隅から隅まで見ているわけではありませんので、以下はその範囲での実感です。
再販業者さんは、「競売だから安く」で入札しているわけではない
たとえば、中古住宅を仕入れてリフォームし、再販売する会社があります。
こうした会社が競売へ入札するとき、
「競売だから、このくらいで買おう」
と特別な値段をつけているわけではありません。
いくらで販売できそうか。
リフォームにいくらかかるか。
諸経費はいくらか。
そして、事業としてどのくらいの利益が必要か。
後ろから計算していくと、
「この物件なら、ここまで」
という入札額が出てきます。
普通に仕入れても、競売で仕入れても、最後に売る家は同じ中古住宅。
安く買うイベントというより、採算の合う仕入れ先の一つです。
採算を厳しく見れば入札額は下がり、その分だけ落札しにくくなる。
かといって、「どうしても欲しい」で金額を上げれば、今度はリフォームして販売したときの利益が薄くなる、または高くて売れなくなる。
落札できる金額と、事業として買っていい金額は、同じではありません。
その線をどこに引くかが、入札価格を考える難しいところです。
開札してみると、「そこまで出すのか」と「これで取れるのか」がある
競売物件の開札結果を見ていると、予想をかなり超える金額が入っていることがあります。
「そこまで出すのか」
と思う。
反対に、
「これはもう少し入札が集まりそうだけどな」
と思っていた物件が、それほど競らずにわりと安く落札されることもあります。
収益が見込めそうな物件でも、意外と参加者が少ない。
ただし、これも住宅を売る側から物件を見ている私の感覚です。
誰かにとっては高い。
別の誰かにとっては、その値段でも十分に合う。
開札結果を見ていると、不動産の値段は一つではないな、と改めて思います。
中をよく見ないまま、家の値段を決める
これが競売で最も難しいポイントの一つです。
通常の中古住宅なら、購入前に室内を見ます。
床を歩く。
水回りを見る。
水平器をあてる。
家の匂いも分かります。
ところが競売では、差押債権者の申立てによる内覧制度などを除けば、入札前に建物内部を自由に確認するのは難しいのが普通です。
直接ピンポンして、
「競売に出ているので中を見せてください」
とお願いする強者も世の中にはいるのかもしれませんが、ちょっと怖いです。
そこで頼りになるのが、いわゆる「3点セット」。
「釣り入門3点セット」「スノーボード・ブーツ・ビンディングセット」のような初心者向けワードの雰囲気ですが、書いてあることは重めです。
ここでいう3点セットは、
物件明細書。
現況調査報告書。
評価書。
占有状況や権利関係、建物の状態、評価の根拠、室内写真など、入札を考えるための重要な情報がまとめられています。
ただ、それを読めば全部分かるわけでもありません。
写真ではきれいに見えた床が、実際には傾いているかもしれない。
部屋に入った瞬間、想像していなかった匂いがするかもしれない。
所有者と全然会えないかもしれない。
このあたりは、落札して初めて分かることがあります。
以前、実際にあったのは
現地を調べてみたら、境界について隣地の方と揉めていた。
近所では知られている事情があった。
過去に建物の中で事故(告知事項)があった。
などなど。
競売資料を読んだあとは、現地を見て、境界を確認し、役所で調べ、必要があれば近隣で話を聞く。
もちろん、聞けば何でも教えてもらえるわけではありません。
それでも、
「この物件なら、この値段まで出してもいい」
と思える材料は増やせます。
ネットで30分調べるより、現地で5分歩いた方が気になるものが見つかることもあります。
安く買えたかどうかは、落札価格だけでは決まらない
結局、
「競売物件は安いのか」
と聞かれれば、普通に売られている物件より安く買えることは、けっこうあります。
ただ、リスクがあるから安い。
ずいぶん使い古された結論になりましたが、実際に入札額を考えていると、やはりそこへ戻ってきます。
その代わり、入札する前に調べられることはあります。
調査をしたうえで落札できれば、
「これはいい値段で買えた」
と思える。
思った以上の金額で誰かに落札されても、
「そこまで出すなら、今回はしょうがない」
と思える。
競売で大事なのは、安値で落札することだけではなく、自分がその金額を書いた理由を持っておくことなのかもしれません。
開札結果は変えられませんが、
「あと30万円出せばよかった」
を何日引きずるかは、事前調査で少し変わります。
