植物の名前を知るたび、庭が少し広くなる

事務所としてお借りしているこの物件は、道路を挟んですぐ林になっています。

虫が鳴き、鳥が鳴き、ときどきカモシカまで顔を出す、来客の種類が少し多彩な事務所です。

庭には、枝垂れ桜、二種類のもみじ、百日紅、アオキ、クレマチスなど、いろいろな植物が植えられています。

管理の都合で、防草シートに覆われている場所も多くあります。

それでも季節になると、植物はシートの脇からきちんと顔を出し、こちらの都合とは関係なく春を始めます。

この事務所へ引っ越してきた当初は、植物をどう管理すればよいのか、ほとんど分かりませんでした。

枝を切ってよい時期も、肥料を与える時期も、虫への対処も分からない。

剪定の動画を見ては、恐る恐る枝を切る。

ホームセンターでは、防虫剤や栄養剤の棚の前で腕を組み、「うーん、うーん」と悩む。

傍から見れば、熱心に商品を比較している人というより、完全に薬剤売場で行き詰まっている人です。

黒ずんで、少し病気がちだったアオキにも、調べながら薬剤や栄養剤を使ってみました。

やがて新しい葉がきれいに出て、少しずつ元気を取り戻したときは、思っていた以上にうれしくなりました。

こちらの世話が効いたのか、アオキ自身の生命力なのかは分かりません。

たぶん、後者の力が大きいのでしょう。

そして、事務所へ移って数年たった今年。

フェンスに絡まり、大きな花を咲かせていた植物が、クレマチスだと初めて知りました。

毎年そこにあったのに、名前を知らなかっただけでした。

花が終わった今は、ふわふわとした可愛い綿毛をつけています。

花が咲いているときだけではなく、その後にもこんな姿があることを、今年初めて知りました。

名前を知ると、見え方も少し変わります。

来年は専用の支柱を用意し、もう少しきれいに誘引してみよう。

剪定や肥料の時期も調べて、今年よりきれいに咲かせてみたい。

数年前までは、庭に何が植えられているのかも、ほとんど知りませんでした。

植物のことを一つ知るたび、同じ庭の中に、今まで見えていなかった楽しみが増えていきます。

同じ庭の中に、来年を楽しみに待つ場所が一つ増えました。

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