新築が高いなら中古へ、ともいかない――盛岡の不動産市況2026.8

「最近、盛岡の不動産市況はどうですか」

打ち合わせの冒頭の句ではあるものの、一言では答えにくい。

売買が止まっているわけではありません。条件と価格が合う物件は、きちんと動きます。

ただ、買主様の足取りは以前より慎重です。

「少し考えます」の“少し”が、少し長くなったように感じます。

数字的には

盛岡市の新設住宅着工戸数は、2025年が1,755戸。前年の1,848戸から約5%減りました。

さらに2026年1月から5月までは513戸で、前年同期の725戸から約29%減っています。月による振れはありますが、新築市場に勢いがあるとは言いにくい数字です。

一方、盛岡地方法務局管内では、2026年5月の建物売買による所有権移転登記が75件ありました。

あくまで参考値ですが、不動産の売買そのものが止まっているわけでもありません。

動いてはいる。

ただ、ぼちぼちです、よりも下、という感覚です。

新築を諦めた方が、全員中古を買うわけではない

新築価格が上がり、

「これからは中古住宅が伸びる」

という話を聞くことがあります。

国の施策も割と中古推しです。

ただ、現場にいると、新築を諦めた方が、そのまま中古住宅へ向かっているようには見えません。

新築から中古へ移る方もいる。

その途中で、

「今は買わない」

に進路を変える方もいる。

中古住宅なら価格は抑えられても、リフォームや設備交換が必要になることがあります。住宅ローンに加えて、税金や保険、今後の修繕も考えなければなりません。

新築より安い。

だからすぐ買える。

となるほどには、家計は素直に動いてくれません。

物価高は、売主様と買主様を反対方向へ引っ張る

盛岡市の消費者物価指数は、2026年6月に前年同月比2.9%上昇。特に食料は5.2%上がっています。

住宅ローンの返済額を考える前に、日々の買い物が家計の余白を少しずつ使っています。

金利上昇も向かい風で、日銀盛岡事務所も、県内経済は持ち直しているとしながら、住宅投資については「弱い動き」と見ています。

売主様は、物価が上がっているから、できるだけ高く売りたい。

買主様は、物価が上がっているから、できるだけ価格を抑えたい。

物価高という言葉1つが、売る側と買う側を反対の2方向へ引っ張っている。

その間で、住宅の取引が動きにくくなっているように感じます。

一方で、収益不動産は比較的動いている

居住用の新築・中古住宅に慎重さを感じる一方、収益不動産は比較的堅調に動いている印象があります。

もちろん、アパートなら何でも売れるわけではありません。

立地、入居率、修繕状況、利回り。数字が合わなければ、投資家の方は驚くほど静かです。

ただ、条件が合う物件には県外からも問い合わせが入り、判断も比較的早い。

自宅を買う方は、毎月の返済だけでなく、食費や教育費、今後の暮らしまで考えます。

一方、収益不動産では、家賃収入から経費と返済を引き、どの程度残るかを見て判断する。

同じ不動産でも、見ている財布が少し違います。

居住用住宅の動きが鈍いからといって、不動産市場全体が同じ温度で冷えているわけではなさそうです。

市況が動くのを、暮らしは待ってくれない

もう少し待てば、工事費が下がるかもしれない。

もう少し待てば、物件価格が落ち着くかもしれない。

そう考えるのは自然です。

ただ、相続した住宅を整理しなければならない。

転勤や子供の進学に合わせて、住み替えなければならない。

市況が整うまで、暮らしの方が待ってくれるとは限りません。

相場には相場の都合があり、暮らしには暮らしの都合があります。

その二つが、ちょうどよく重なるとは限らない。

だから、売るか待つか。買うか見送るか。

価格だけではなく、売れるまでの時間や管理の負担、購入後の返済や修繕まで並べながら、その時点で選べる方法を一緒に考えていければと思います。

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