不動産の広告を見ていると、よく出てくる言葉があります。
「閑静な住宅街」
ある日ふと思いました。
閑静とは、どのくらい静かなのか。
車があまり通らなければ閑静なのか。
犬が一匹吠えたら、まだ閑静なのか。
犬が二匹になったらどうなのか。
近所のお父さんが日曜の朝7時から草刈機を始動した場合、その住宅街はその瞬間だけ「閑静」の資格を失うのでしょうか。
考え始めると、どうにも判定が難しい言葉です。
「閑静」に合格ラインはあるのか
たとえば不動産広告の「徒歩10分」にはルールがあります。
道路距離80mを徒歩1分として計算し、端数は切り上げます。
かなり具体的です。
一方で「閑静な住宅街」には、徒歩分数のような明確な基準は見当たりません。
環境省には住宅地の騒音について昼55デシベル、夜45デシベルといった目安がありますが、それを下回れば晴れて「閑静」を名乗れる、という仕組みでもないようです。
もし合格ラインがあれば、不動産会社も測定器を持って現地へ行けます。
ピッ。
57デシベル。
「惜しい。こちらの住宅街は閑静ではありません」
非常に分かりやすい。
ところが実際の街には、そんな明快な境界線はありません。
犬も吠えますし、車も通ります。
夏には草刈機、冬の盛岡なら除雪車もやってきます。
草刈りをしないとあっという間に森になりますし、除雪車には来てもらわないと困ります。
そもそも住宅街には人が住んでいます。
人が住んでいる以上、完全に静かということはありません。
では、どこからが閑静で、どこからが普通の住宅街なのか。
結局よく分かりません。
当社の事務所の外では、鳥が鳴いています。セミが鳴いています。
豆腐屋さんのラッパも聞こえます。
そして、近隣の住宅売却を承った際は、販売ページの「閑静な住宅街」のチェックボックスを前に、セミの鳴き声が脳裏をよぎるのでした。
