内覧の30分前。
不動産屋は、物件の前でただ静かにお客様を待っている。
わけではありません。
物件をご案内する仕事は、玄関で「こんにちは」と言う少し前から始まっています。
空き家に開通しているネット
しばらく空いている住宅へ案内に行くと、蜘蛛が入居していることがあります。
玄関前に一本。
玄関をくぐってもう一本。
室内にも、いつの間に入ったのか分からない虫。
お客様が来る前に撤去します。
空き家は、人が住んでいなくても静止画にはなりません。
虫は入る。
草木は伸びる。
案内前に物件へ行くのは、鍵を開けるためだけではないんです。
空き家の雑草の爆発力
ある物件では、庭の草が爆発的伸長を見せていました。
ものによっては胸の高さくらいまであるでしょうか。
これはさすがに、そのままではまずい。
ところが手袋を持ってきていません。
車の中を探して見つかったのは、ゴミ袋。
仕方がないので両手にゴミ袋をはめて、草むしりを始めました。
珍しいタイプの園芸用品です。
ひと通り抜き終わったころ、手からほんのりいい匂いがします。
ハーブでした。
おそらく以前お住まいだった方が植えたのでしょう。
これがかぶれたりする植物だと大変なことになっていました。
不動産の業務には、植物の知識も必要なのかもしれません。
わざわざ忘れないように準備したのに。
冬の急なご案内もあります。
その日は事務所のまわりの雪かきをしているところへ、内覧のお話が入りました。
急いで事務所へ戻る。
物件資料を用意する。
鍵を確認する。
その途中で、
「現地も雪が積もっているだろうから、雪ベラを持っていこう」
と思いました。
ちゃんと思いました。
なので玄関脇に用意しました。
そして現地に着いて、持ってきていないことに気づきました。
道路から玄関まで、雪。
お客様はもう来る。
できることは一つです。
踏む。
ひたすら踏む。
長靴で何往復かして、玄関までの道を作りました。
雪かきをしていた不動産屋が、雪ベラを忘れ、最後は自分の体重で圧雪する。
情けないですが、本人は真剣です。
内覧は、玄関を開ける前にもいろいろある
もちろん毎回、こんなことをしているわけではありません。
普通に鍵を開け、換気をして、資料を確認してお客様を待つ日もあります。
でも、実際の住宅は広告写真の状態でこちらを待っていてはくれません。
昨日の風で枝が落ちていることもある。
冬なら雪が積もる。
夏なら草が伸びる。
蜘蛛にも蜘蛛の都合があるでしょう。
そんな状態を見ながら、その日にできる範囲で整えて、お客様を迎えます。
内覧のとき、不動産会社の担当が少し息を切らしていたら、もしかすると直前まで玄関への道を作っていたのかもしれません。
