転勤や進学で盛岡へ。
街のことを調べると、おそらく早い段階で「冬は寒い」という情報にたどり着きます。
それは間違いありません。
ただ、盛岡での暮らしは、寒さだけでできているわけでもありません。
私は2011年に、いわゆるJターンで盛岡へ移りました。
15年ほど暮らして感じるのは、盛岡には突出して多いものがあまりないということです。
そして、それが案外、居心地のよさにつながっています。
人が少ないというより、多すぎない
盛岡に移って最初に感じたのは、人の少なさでした。
正確には、人が多すぎない。
駅や商業施設へ行けば人はいますし、イベントがあれば混雑もします。
ただ、休日なのに人混みで疲れる、ということはあまりありません。
盛岡には活気がないのではなく、活気がこちらの生活を押しのけてこない。
街と自分の間に、少し余白があります。
海は遠い。でも、2時間が遠くなくなる
盛岡から三陸の海までは、車で2時間ほどかかります。
県内の移動なのに、きちんと小旅行です。
ところが不思議なもので、暮らしているうちに、その2時間があまり苦ではなくなってきます。
街を抜け、山を越え、その先に海がある。
今では、海までの運転も移動というより助走に近くなりました。
一方で、温泉や山、ゲレンデは、行き先を選べば1時間ほど。
海には少し覚悟が必要ですが、山と温泉は気軽にこちらを待っています。
家賃が安くても、冬がきっちり上乗せしてくる
地方暮らしは生活費を抑えやすい、という印象があるかもしれません。
ただし、盛岡では冬の暖房費を無視できません。
移ってきた当初、住んだ物件はプロパンガスでした。
請求額が、東京で都市ガスを使っていた頃の倍以上になり驚きました。
同じようにお湯が出ます。
料金だけが、ずいぶん違いました。
プロパンガスは供給会社によって単価が異なるため、賃貸住宅では家賃だけでなく、ガスの種類や料金も確認した方がよいでしょう。
ただし、雪景色は無料です。
雪かきのない部屋と、採れたての野菜
地方都市では戸建て住宅ばかりだと思っていましたが、盛岡にはマンションも多くあります。
車を持たずに暮らしたい方や、雪かきの負担を減らしたい方にも、選択肢はあります。
産直が身近なのも、暮らしていて感じるよさです。
季節の野菜や果物、山菜などが、新鮮でかなり手頃な価格で並びます。
岩手の食べ物はおいしい。
ただ、私は他の地方都市で長く暮らしたことがないので、青森にも山形にも長野にも、おいしいものは普通にあるのだろうと思っています。
盛岡を褒めるために、ほかの地域をまずくする必要はありません。
それでも、地元の食材が特別なごちそうではなく、普段の食卓に入りやすいことは、盛岡暮らしのよさだと思います。
面白い場所は、、えーと、どこだろう
盛岡には、大規模な遊園地や水族館のような、そこへ行くだけで一日が完成する施設は多くありません。
県外から友人が来て、
「絶対に行くべき、おすすめの面白い場所はどこか」
と聞かれると、少し考えます。
イオンが脳裏をよぎりますが、考えている時間が長くなることもあります。
ただ、映画館も、買い物をする場所も、病院も学校も飲食店もある。
新幹線も止まり、Amazonお急ぎ便も普通に届きます。
何でも過剰にあるわけではない。
けれど、暮らしに必要なものは一通りある。
その「足りているけれど、押しつけてこない感じ」が、盛岡の居心地のよさなのかもしれません。
戻ってきて、ほっとする街
秋に盛岡へ来れば、間もなく冬が始まります。
冷えた車、凍った道路、早く暗くなる空。
こんなところへ来てしまった、と思う日もあるかもしれません。
それでも冬を越え、春になり、産直にタラの芽が並び、ときどき温泉や海へ出かける。
そうして何年か暮らした後、県外から盛岡へ戻ってきたとき、少し肩の力が抜けていることに気づきます。
派手に歓迎してくれる街ではありません。
こちらが暮らした時間だけ、静かに居場所を返してくれる街です。
転勤や進学で来た街が自分の街になるのは、有名な観光地を気に入ったときではなく、戻ってきて、ほっとしたときなのかもしれません。

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